最高裁判所第一小法廷 昭和55年(あ)1585号 決定 1981年1月22日
本籍
鹿児島市上福元町六、四一六番地
住居
鹿児島市上福元町四、二七〇番地
砕石業
永里武重
明治四〇年九月一〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和五五年九月一六日福岡高等裁判所宮崎支部が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人本人の上告趣意は、憲法三七条一項、三二条違反をいう点を含め、実質はすべて単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 谷口正孝 裁判官 団藤重光 裁判官 藤崎萬里 裁判官 本山亨 裁判官 中村治朗)
○昭和五五年(あ)第一五八五号
被告人 永里武重
被告人の上告趣意(昭和五五年一一月一四日付)
原判決は、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められ、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認がある。同時に原審において審理を尽しておらず、被告人の公平な裁判を受ける権利(憲法三七条第一項、同第三二条)を著しく侵害したものであり、憲法の違反があり原判決は破棄されなければならない。
一、昭和五五年七月四日付福岡高等裁判所宮崎支部法廷において被告人永里武重が弁論要旨を提出しましたら杉島広利裁判長と堀検事と協議した結果、右の提出した弁論要旨にかかる事項については今まで審理をつくしたものであるから今回審理する必要はないので結審する。本件に関しては昭和五五年九月一六日午前一一時に判決の言渡しをすると言われたので被告人永里武重はびっくりして腑に落ちない顔をしていたら裁判長杉島広利がこれに対して異議があるなら弁護士に相談しなさいと言って退場しました。
(証拠書類として(イ)弁論要旨提出)
二、昭和五五年七月三一日付で被告人永里武重が弁論再開申立書を提出し、同時に新たな証人調べの申立をしたが、福岡高等裁判所宮崎支部が却下しました。
(証拠書類として(ロ)弁論再開申立書を提出)
三、昭和五五年九月八日付で裁判官忌避の申立をしました。その理由として弁論再開して証人調べもしようとしない裁判官は事件について予断と偏見を持っているので公平な裁判所による裁判が期しがたいというものです。
裁判官忌避の申立は、被告人永里武重が公正な裁判所による裁判を得る最後の手段でありました。
(証拠書類として(ハ)裁判官忌避の申立書提出)
四、(一) 証拠書類(イ)に関して
本件に関しては、弁論要旨に記載してある所得税法違反額金九、二五六万八、五〇〇円にのぼると検察官は主張されましたが被告人永里武重のあずかり知らぬところであります。
従って現金及び預金でも証拠を提出して下さいと要求しましたが裁判官は審理の必要はないと言われた。
日本の現在の税法では審理未了の事件に関して処罰権がないのは当然の事です。
(二) 証拠書類(ロ)について
昭和五五年七月三一日付の書面で弁論再開申立書を提出しましたが却下されました。
この件に関しては審議未了の事件であり被告人永里武重は承諾しないままに裁判長杉島広利等が勝手気ままに却下する事は現在の日本の税法で処罰権を行使できないことはいうまでもありません。
(三) 証拠書類(ハ)について
本件に関して(一)、(二)のとおり、審理未了のまま判決を下すことは訴訟法上、憲法上許されないので裁判官忌避の申立をしました。
(四) 本件に関して昭和五五年九月一七日付の新聞、テレビ等で報道・記載された。被告人永里武重は懲役十ケ月罰金二、〇〇〇万円の実刑判決を知り、この判決におどろき、ショックのあまり糖尿病性白内障で失明してしまいました。
現在被告人永里武重は鹿児島市の眼科川畑病院に入院治療中であります。
(証拠書類として(ニ)診断書提出)(添付書類省略)((イ)(ロ)(ハ)(ニ)) 以上